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7 必要的共犯の主張についての検討:そもそも必要的共犯ではない 「必要的共犯」とは、「任意的共犯」の対となる概念です。 「任意的共犯」が、単独でも犯しうる犯罪に複数人が関与する場合で、共同正犯(刑法60条)、教唆犯(同法61条)、幇助犯(同法62条)の規定が適用されます。たとえば、殺人罪(同法199条)や窃盗座(同法235条)は共犯の存在なくして成立し得ます。 これに対して、「必要的共犯」は、その犯罪が成立するために複数人による共働や加功が犯罪類型上、前提とされているものです。 「必要的共犯」にも、「集団犯」と「対抗犯」の2種類があります。 「集団犯」は、内乱罪(刑法77条)や騒乱罪(同法106条)のように、犯罪の構成要件上同一の目標に向けられた多衆の共同行為を要する犯罪をいいます。 「対抗犯」は、重婚罪(同法184条)、贈賄罪・収賄罪(同法197条~198条)のように、犯罪の構成要件上2人以上の者の互いに対抗した行為を必要とする犯罪をいいます。その双方とも処罰される場合が一般的ですが、わいせつ物頒布・販売罪(刑法175条)のように、対向者の一方のみ(販売者)を処罰する場合もあります(大谷實「刑法講義総論(新版第3版)」(成文堂)368頁)。 グレーゾーン論者が、賭博場開帳罪と(常習)賭博罪が必要的共犯であると主張する根拠の拠り所となるのが、東京地判昭和59年11月5日(刑集最高裁判所刑事判例集40巻6号514頁)です。 同事件では、賭博遊技場経営者に賭博場開帳罪の実行行為が成立すると認められるためには、「経営者の右の個々の賭客との賭博行為の存在を立証する必要がある」として、その理由を以下のとおり掲げています。, コインビートコインスロットベガス. 「賭博行為」は、財物を賭して偶然の輸を争う行為であって、相手方たる賭客の存在を必要とする対向的必要的共犯であり、これを処罰する理由は、賭博が「国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらある」(最判昭和二五年一一月二二日刑集四巻二三八〇頁)ことにあるほか、「當事者ノ産ヲ破ル虞アルカ故」(大判昭和四年二月一八日法律新聞二九七〇号九頁)にこれを処罰するのであり、その保護対象が、公益ばかりでなく、個人的な面にも及んでいることを考慮すれば、賭博遊技場経営者の賭博行為を「不特定多数の賭客を相手方とした賭博行為」と広く捉えると、個々の相手方たる賭客の存在があいまいとなり、その賭客の勤労観念や財産等を侵害する点を捨象する点を捨象することになるので、やはり個々の賭客の存在を明らかにし、その賭客との間の賭博行為としての刑事責任を問うべきものと考える。 気を付けなければならないのは、上記判決は下級審レベル(東京地方裁判所)の判決であるということです。 最高裁判所の判決である最判昭和24年1月11日(最高裁判所裁判集刑事7号11頁) は、以下のとおり、賭博場開帳罪と常習賭博罪を別個独立の犯罪であり、賭博の共犯者中に賭博開帳罪に該当するものがなく、同罪によって処罰されたものがなかったとしても常習賭博罪は成立するものと判示しています。 常習賭博罪と賭博開張罪とは刑法第一八六条の第一項と第二項とに分けて規定されて居るのであつて、もともと両罪は罪質を異にし、且その構成要件も何ら関聯するところがないのであるから、両罪が同一条下に規定されて居るからと云うて、所論のように不可分の関係にあるものと即断することは出来ないし、又両罪は全然別個の犯罪事実に関するものであるから、所論のように正犯と従犯の関係にあるものでないことも極めて明白であるばかりでなく、被告人両名の賭博常習性の有無は専ら、各被告人個人の習癖の有無によつて決せられることであるから、本件賭博の共犯者中に賭博開張罪に該当するものがなく、又同罪によつて処断されたものがなかつたとしても、それによつて被告人両名に対する常習賭博罪の成立が阻却される理由は少しも存しない。 本判決は、賭博場開帳罪と(常習)賭博罪が必要的共犯であることを否定した判決であると考えられます。「賭博罪」(刑法185条)と「常習賭博罪」(同法186条1項)の違いは、「常習性」だけですので、本判決に従えば、「賭博場開帳罪」と「賭博罪」についても別個独立の犯罪であると考えられます。筆者はこの裁判の判示が正しいものと考えています。 著名な刑法学者(大谷實、山口敦、前田雅英先生らの著書)の書籍を調べてみた限りでは、「贈賄罪」と「収賄罪」の関係と同様に、「賭博開帳罪」と「(常習)賭博罪」について、「対抗的必要的共犯」であるとするものはありませんでした。 なお、仮に、「賭博場開帳罪」と「(常習)賭博罪」が、上記の東京地方裁判所の判決のとおり、対抗的必要的共犯であったとしても、グレーゾーン論者が主張するとおりの結論となるかについても疑問があります。 上記の東京地方裁判所の判決では、賭博遊技場経営者に賭博場開帳罪の成立のためには、対抗的なプレイヤー(顧客)の賭博行為がなければならないとするものです。海外にサーバーを置くオンラインカジノ事業者については、オンラインカジノ事業者の「賭博場の開帳」とプレイヤーの「賭博行為」というそれぞれの実行行為はいずれも特定しており、仮に属地主義の観点からオンラインカジノ事業者に賭博場開帳罪が成立しないとしても、それに伴って、国内のプレイヤーに(常習)賭博罪が成立しないとまで言えるかについては疑問があります。 贈賄罪・収賄罪のような対抗的必要的共犯について、贈賄者が国外にいて、収賄者が国内にいる場合に、贈賄者に贈賄罪が成立しな